コラム

公正証書遺言の費用と流れ~自分で作成するのは可能?

公正証書遺言とは、証人の立会いのもと、公証役場で作成してもらう遺言書のこと。
遺言書の中では一番確実性が高いため、自分の遺言を確実に実現したい方から多く選ばれています。

公正証書遺言を作成するには、公証役場の手数料や専門家への依頼費用がかかります。
今回は、公正証書遺言にかかる費用の内訳と、費用節約のために自分で作成できるのか?を解説します。

公正証書遺言の概要

公正証書遺言とは、公証役場の公証人に作成してもらう遺言書のことです。
専門家との打ち合わせと証明のもと作成するので、自分で作成する自筆証書遺言よりも確実性が高いのが特徴です。
遺言書の内容をより確実に実行してもらいたい方の多くが、この公正証書遺言を用います。

公正証書遺言の必要書類

公正証書遺言を作成するのに必要な書類は、以下の通りです。

・遺言者の印鑑証明書
・戸籍謄本 各1通 《相続人に相続させる場合》
遺言者の相続人に相続させる場合は、遺言者と相続人それぞれの戸籍謄本が必要になります。
・遺言者の本人確認資料(運転免許証・住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ)
・受遺者の住民票(法定相続人以外に財産を遺贈する場合)
・固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書(財産に不動産がある場合)
・不動産の登記簿謄本(財産に不動産がある場合)
・証人の氏名・住所・生年月日・職業をメモした資料
・証人の認印
・遺言執行者の資料(財産を受け取る人以外を遺言執行者とする場合)


どれが必要となるかは、遺言の内容について打ち合わせをしていく中で確定させます。
公証役場に最初に相談に行く時には、「本人確認資料」が用意できれば問題ありません。

作成の流れ

公正証書遺言は、以下の流れで作成します。

1.公証役場に連絡し、遺言内容についての打ち合わせを公証人と行う
2.必要書類を公証役場に届ける
3.遺言作成の日程を決め、証人2人と公証役場へ行く
4.公証人から本人確認と質問等を受ける
5.遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝える
6.公証人が遺言の内容を筆記し、遺言者と証人に対して読み上げる
7.遺言者と証人が内容の正確なことを承認し、それぞれ署名押印する
8.公証人が民法第969条で定められている方法に従い作成された旨を付記し、署名押印


遺言者が公証役場に行けない事情がある場合は、別途費用費はかかりますが、公証人に自宅・病院・老人ホーム等まで来てもらうこともできます。
また、遺言者が話すことができない場合には、通訳人を用意して通訳してもらったり、自書を口述に代えたりすることが可能です。

公正証書遺言作成にかかる費用は?

それでは、公正証書遺言作成にかかる費用についてご説明していきます。

①公証役場での手数料

公正証書(ここでは遺言書)作成にかかる手数料は、公正証書に記載する財産の価額によって定められています。
財産の価額と手数料の一覧は、以下の通りです。

100万円以下:5,000円
100万円を超え200万円以下:7,000円
200万円を超え500万円以下:11,000円
500万円を超え1,000万円以下:17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下:23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下:29,000円
5,000万円を超え1億円以下:43,000円


財産の価額が1億円を超え3億円以下の場合、43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円が加算されます。
財産の価額が3億円を超えると95,000円+超過額5,0000万円ごとに11,000円が加算された額、10億円を超えると249,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円が加算された額となります。

また、公正証書遺言一通に記載される財産が1億円以下の場合には「遺言加算」という手数料が別途11,000円発生します。

なお、複数の人に財産を残す場合には、それぞれの人に対して上記の手数料がかかります。
例えば、Aさんに5,000万円、Bさんに3,000万円遺贈するという場合、手数料は
29,000円+23,000円+11,000円(遺言手数料)=63,000円
ということになります。

②証明書等の交付費用

先にもお伝えした通り、公正証書遺言を作成するためには「印鑑証明書」「戸籍謄本」「住民票」「不動産の登記簿謄本」といった公的な証明書が必要です。
これらの交付を受けるための費用として、合計1,000~5,000円程度かかります。

③証人手数料

最後に、証人手数料です。
自分で証人を用意することができる場合、報酬は遺言者と証人の話し合いで決定します。

遺言者が自分で証人を用意できない場合は、公証役場に証人を紹介してもらえます。
各公証役場で異なりますが、このための手数料は1人あたり10,000円ほどが相場です。

また、弁護士や司法書士などの専門家に証人になってもらうことができます。
専門家に証人を依頼する場合、1人あたり10,000円~20,000円ほどの費用がかかります。

公正証書遺言作成を専門家に依頼する場合の費用

公正証書遺言作成にあたって、内容をどうすれば良いか迷う方や、様々な手続きが難しくてできないという方も多いでしょう。

そんな場合は、司法書士などの専門家に力を借りることができます。
もちろん費用は発生しますが、専門家に相談することにより節税ができたり、複雑な手続きが不要になって遺言作成がスムーズになったりします。
また、専門家を遺言の執行者としておくことで、自分の死後も確実に遺言の内容を実現してもらえます。

司法書士費用の相場

司法書士に依頼できることと、その費用相場は以下の通りです。

・公正証書遺言作成のサポート(相談・公正証書遺言案文作成・証明書の取り寄せ・公証人との打ち合わせなど):50,000~80,000円
・証人立会:12,000~20,000円/人
・遺言書の保管:10,000円/年
・遺言執行:遺産総額の1~2%


公正証書遺言作成のサポートにどこまでが含まれるかは、各司法書士事務所で内容が異なります。
また、公正証書遺言案の作成に関しては、財産の価額が大きくなるほど費用も上がる場合が多いです。

弁護士費用の相場

2004年3月まで、弁護士報酬は報酬規程で定められていました。
現在は各弁護士事務所が自由に報酬を決めることができますが、旧規定をベースとして報酬額を決めている場合が多いです。

公正証書遺言作成に関して、弁護士に依頼できる内容とその費用相場は以下の通りです。

・遺言作成(定型):100,000~200,000円
・遺言作成(非定型):200,000円~
・公正証書にする場合:上記の費用+30,000円~
・遺言執行:遺産総額の0.5~4%

行政書士費用の相場

行政書士に公正証書遺言作成を依頼する場合、できることとその費用相場は以下の通りです。

・公正証書遺言作成のサポート相談・公正証書遺言案文作成・証明書の取り寄せ・公証人との打ち合わせなど):80,000~100,000円
・証人立会:10,000~20,000円/人
・遺言の保管:10,000円/年
・遺言執行:遺産総額の0.5~4%

自分で公正証書遺言を作成する際の注意点

公正証書遺言は、専門家の手を借りず自分で公証人と話し合って作成することも可能です。
自分で公正証書遺言を作成する場合には、以下の点に注意しましょう。

作成には証人が2人必要

公正証書遺言の作成には、2人の証人が必要です。
これは、身近な人に気軽に頼めるものではありません。証人は遺言の内容を全て知ることになるので、トラブルの元となり得ます。

また、
・法定相続人になると推定される人や遺言で財産を受け取る人
・未成年者
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
これらに該当する人も証人にはなれません。

このように制約が厳しいので、証人は公証役場からの紹介を利用したり、専門家に依頼したりする人も多いです。

遺言執行者を指定しておくのがおすすめ

遺言執行者とは、遺言者の他界後、遺言の内容を正しく実現するための手続きを行う人のことです。

遺言執行者がいないと望み通りに遺産が配分されなかったり、手続きの度に法定相続人全員の署名・押印が必要になって手続きが煩雑になったりすることも。
絶対に必要というわけではありませんが、公正証書遺言を作成する際には遺言執行者を指定しておくのがおすすめです。

遺言執行者には、法定相続人や受遺者などの身内のほか、司法書士・弁護士などの専門家も指定することができます。

まとめ

公正証書遺言は確実性が高く、作成する人も多い遺言の形式です。
自分・証人2名がいれば公証役場で作成できるものですが、内容や手続きについて司法書士・弁護士・行政書士といった専門家に相談することもできます。
費用は数万円~数十万円かかりますが、自分の遺言に確実性を持たせたい方におすすめです。