コラム

家族信託にかかる費用まとめ~専門家に依頼する場合は?

家族信託をお考えで、「どのくらい費用がかかるの?」「手続きを自分で行えば費用を節約できる?」などといった疑問をお持ちの方は多いでしょう。
家族信託は自分で手続きをすることも不可能ではありませんが、膨大な手間や様々なリスクを考えると、司法書士などの専門家に依頼した方がベターです。

今回は、家族信託にかかる最低限の費用と、専門家に依頼する場合の報酬相場をお伝えしていきます。

家族信託にかかる基本的な費用

家族信託とは、自分の判断力が低下してしまったときのために、家族の誰かに自分の財産管理を任せる契約のことです。

家族信託契約は、法律上は口頭(口約束)でも有効に成立しますが、後々の予期せぬトラブルを防ぐためにも書面で信託契約書を作成しておくことが望ましいです。また、書面についても、私人間で取り交わす契約書ではなく、公正証書で作成することが望ましいでしょう。

まずは、これらの書類の作成費用について解説していきます。

信託契約書作成費用

信託契約書とは、信託財産の内容や評価額、それを管理する方法といった、家族信託契約の内容をまとめた書類です。
この信託契約書は自分で作成することもできるので、その場合の費用は0円(紙代・インク代程度)です。

しかし、実際には司法書士などの専門家に相談し、作成を代行してもらうことをおすすめいたします。
なぜなら、信託契約書はとても重要な役割を持つ書類で、もし不備があった場合トラブルに繋がるリスクが大きいためです。
知識のない人が信託契約書を作成するには、事前に相当な勉強が必要なので、その手間や時間、不備があった場合のリスクを考慮すると、専門家に依頼した方が確実です。
専門家に信託契約書の作成を依頼する手数料は、10~30万円ほどが相場です。

公正証書作成費用

次に、作成した信託契約書をより確実なものにするには、公証役場で認証を受け、「公正証書」にする必要があります。
公正証書の作成費用は、信託財産の評価額によって決まります。公的機関に納める費用なので、値引きや変動はありません。

公正証書の作成手数料は、以下の通りです。

~100万円:5,000円
100万円を超え200万円以下:7,000円
200万円を超え500万円以下:11,000円
500万円を超え1,000万円以下:17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下:23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下:29,000円
5,000万円を超え1億円以下:43,000円
1億円を超え3億円以下:4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億を超え10億円以下:9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合:24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額


また、公正証書の交付手数料として、1枚あたり250円がかかります。

そして、この手続きを司法書士などの専門家に代行してもらう場合、別途手数料がかかります。
基本的には、信託契約書の作成とセットで依頼することが多いので、公正証書作成の費用を個別には定めていないところもあります。

また、家族信託契約書は私文書であっても問題ないので、公正証書の作成自体をしないという選択肢もあります。
その場合は、もちろん公正証書に関する手数料は必要ありません。
ただし、公正証書を作成しないと、内容は公的に証明されていないので、相続発生時や税務調査が入った時にトラブルになるリスクがあります。

家族信託に不動産がある場合の費用

家族信託の信託財産に不動産がある場合、登記簿に信託した旨を記載する必要があります。
この登記手続きも自力で行うことは不可能ではありませんが、専門知識が必要なため司法書士などの専門家へ依頼する方が一般的です。

ここからは、信託不動産の登記にかかる費用について、解説していきます。

登録免許税

登録免許税は不動産登記を行う際に法務局に納める税金です。
こちらは税金なので、値引きや変動はありません。
登録免許税の金額は、以下のように計算します。

土地:固定資産税評価額×0.3%
家屋:固定資産税評価額×0.4%

登記代行手数料

司法書士に信託登記を依頼する手数料は、1件あたり10~20万円程度です。

家族信託を専門家へ依頼する場合の費用

専門家に家族信託を依頼する場合の費用は、大きく分けて「手続きの代行費用」「家族信託の設計・コンサルティング費用」の2つがあります。
中には、これらを合わせたパッケージプランを提案している事務所もあります。
手続きの代行費用については、先にお伝えした通り「契約書作成:10~30万円」「不動産登記:1件約10~20万円」が相場です。

その他に、家族信託の内容設計から依頼する場合、「信託財産の0.3~1%」程度の手数料がかかります。
例えば信託財産の総額が5,000万円の場合、15~50万円ほどが相場です。

自分で信託内容を設計できればこの費用は必要ありませんが、家族信託を適切に組むには高度な専門知識が必要となります。
そのため、信託財産の総額にもよりますが、家族信託を専門家に依頼する場合の費用総額は以下のようなイメージです。

信託財産に不動産がない場合・・・40万円~100万円
信託財産に不動産がある場合・・・50万円~

家族信託契約締結後に発生する費用

家族信託は、契約時だけではなく契約締結後に発生する費用もあります。

受益者代理人・信託監督人への報酬

場合によっては、「受益者代理人」「信託監督人」を設定することもあり、その場合は報酬が必要になります。

法的に効力を持つ契約とはいえ、家族信託は家族間のことなので、管理がルーズになってしまう可能性もあります。
特に委託者・受益者が高齢であったり、未成年・障害者だったりなどで判断能力が低い場合、受託者が適切に財産を管理しているかどうか監督する人が必要です。
その役割を持つのが、受益者代理人や信託監督人です。

受益者代理人や信託監督人の主な役割は、受益者の権利保護です。これらを委託者・受託者・受益者と利害関係のない司法書士などに依頼した場合、月々の報酬として数万円程度の費用が必要になります。

信託契約書の変更料

信託契約書の内容は、一度作成したあとに変更することも可能です。
その場合、新たに一から作り直すのではなく、該当箇所のみ変更するという手続きを行います。
信託契約書の変更手続きにかかる費用は、およそ5万円~10万円です。

家族信託の費用は自分でやれば節約可能?

家族信託を専門家に依頼すると、少なくとも50万円以上の費用がかかります。
その費用を「高い」と感じたり、「自分でやれば節約できるのでは?」と思ったりする方もおられるでしょう。

しかし、ここまでも何度かお伝えしてきたように、家族信託を適切に組むには法律・税金・公的手続きについての高度な専門知識が必要です。
家族信託は大きな金額を扱いますし、家族間の信頼に関わることでもあるので、もし不備があった場合トラブルに繋がるリスクが大きいです。
手続き自体も煩雑で、慣れない方が行うと、多くの手間や時間が取られてしまいます。

それらの手間を減らしてリスクを避けるためと考えると、司法書士などの専門家への報酬は決して高いものではありません。
専門家への報酬は、家族信託で確実に財産を守るために必要なコストとして捉えましょう。

まとめ

家族信託には、専門家に相談・手続き代行を依頼する費用、公的機関に納める費用を合わせると、少なくとも50万円以上の費用がかかります。
しかし、家族信託を考えている方は、司法書士などの専門家に相談するのがおすすめ。自分で行えば、公的費用以外はほぼ無料で済ませることもできますが、専門知識のない方にとってはかなり難易度が高いからです。