コラム

家族信託を司法書士に依頼するメリット~費用・司法書士の選び方も紹介

家族信託をお考えの方は、まずは司法書士に相談することをおすすめいたします。
登記や書類作成のプロフェッショナルである司法書士には、個人では難しい手続きを一任することができ、スムーズに家族信託を組むことができます。

今回は、家族信託を司法書士に相談するメリットや、司法書士ができることについて解説していきます。

家族信託を司法書士に相談するメリット

家族信託を司法書士に相談するメリットは、3つあります。

・相談から全ての手続き完了まで一任できる
・専門知識を生かし、最適かつ正しい手続きができる
・時間・手間の節約ができる


家族信託自体は、手続きなどに特別な資格が必要なものではありません。
専門家でない方が自分で家族信託を組むことも不可能ではありませんが、時間・手間・不備があった場合のリスクを考慮すると、あまりおすすめはできません。

家族信託の設計や手続きには、高度な専門知識が必要です。
また、家族信託は大きなお金が絡むことなので、不備があったり内容が適切でなかったりすると、予期せぬトラブルの元になることもあります。
家族信託を考えている場合には、まずは専門家に相談してみましょう。

家族信託には、司法書士の他に弁護士・税理士といった専門家が関わることもありますが、基本的には司法書士に相談することをおすすめいたします。
なぜなら、家族信託の信託財産には、半数以上のケースで不動産が含まれるためです。
司法書士は不動産の登記手続きに精通している専門家なので、家族信託のほとんどの手続きを一任できます。

家族信託において司法書士ができること

それでは、家族信託において、司法書士ができることについて解説していきます。

①信託の設計・作成

家族信託を組むには、まずはその内容を決定しなければなりません。
具体的には、以下のようなことを決定します。

・信託財産の範囲
・財産を管理する人(受託者)
・利益を受け取る人(受益者)
・財産を管理する方法


これらを「家族信託の設計」といい、司法書士は適切に財産を管理できるようコンサルティングを行ってくれます。
また、家族信託を設計するために、全ての財産を洗い出したり、親族関係を把握するために資料を集めたりする手続きも、司法書士が行うことができます。

その他の、相続時の揉め事については弁護士、相続税など税金に関することは税理士の専門分野です。
しかし、相続や家族信託を得意とする司法書士であれば、提携している弁護士、税理士等がいるので、1ストップで窓口になってくれます。

②公正証書化手続き

家族信託の内容が決定し、信託契約書が作成できたら、それを公正証書にする必要があります。

公正証書とは、公証役場で公証人の証明を受けた書類のことです。
信託契約書は私文書でも問題はありませんが、公正証書化しておいたほうがより確実で、トラブルに発展するリスクを避けることができます。
司法書士は信託契約書を公正証書化するために、公証人と打ち合わせを行ったり、手続きを代行したりすることができます。

③不動産登記・名義変更手続き

不動産の登記や名義変更手続きは、専門家の中でも司法書士の専門分野です。
必ずしも資格がなければできないというわけではありませんが、非常に複雑な手続きなので、普通は司法書士に依頼をします。

家族信託の信託財産に不動産が含まれる場合、登記簿に信託した旨を記載する必要があります。
委託者・受託者・受益者の氏名、住所、信託の目的などを記した信託目録登記をしたり、受託者が不動産を処分・譲渡等した時に名義変更手続きを行ったりします。
司法書士は、これら登記関連業務のプロフェッショナルです。

④専用口座作成

預金を信託財産とする場合、「信託口口座」という家族信託専用の口座を作成することが望ましいです。
信託口口座を開設できる銀行は限られていますが、司法書士は家族信託に対応している銀行も把握しています。

また、信託口口座の開設には、事前に法務チェックを受けた信託契約書(できれば公正証書)が必要です。
この口座開設の準備も、司法書士がサポートしながら進めます。

家族信託を司法書士に依頼するときの費用

家族信託を司法書士に依頼する際は、当然ながら費用がかかります。
家族信託における司法書士費用の相場は、安ければ40万円程度、高ければ100万円以上です。
その費用の内訳について、解説していきます。

報酬・費用相場

家族信託を司法書士に依頼する場合の報酬相場は、「信託財産の評価額の0.3~1%」。
これは司法書士に対する報酬の部分のみなので、実際にかかる費用には、さらに登録免許税などの法定費用や、交通費・証明書の交付費用といった実費も加算されます。
それら全てを合わせると、司法書士に依頼して家族信託を行う場合の費用総額は、以下のようなイメージです。

信託財産に不動産が含まれている場合・・・50~100万円
信託財産に不動産が含まれていない場合・・・40~70万円


基本的に、信託財産の価額が大きいほど、手数料や報酬も多くなります。

費用の内訳

それでは、家族信託にかかる費用の内訳を詳しく見ていきましょう。

コンサルティング・代行手数料

家族信託のコンサルティングや、手続きの代行を司法書士に依頼する場合、報酬の相場は「信託財産の評価額の0.3~1%」です。

ちなみに、信託財産に不動産が含まれる場合、評価額とは「固定資産税評価額」のことです。
市場価格ではないので、注意してください。

信託契約書作成・公正証書化費用

信託契約書の作成・公正証書化の費用は、個別ではなくセットで提示している司法書士事務所が多いです。

信託契約書を作り、それを公正証書化するまでの手続き代行の報酬は、15~30万円程度が相場です。
その他に、公正証書化の際には以下の手数料を公証役場に支払います。

~100万円:5,000円
100万円を超え200万円以下:7,000円
200万円を超え500万円以下:11,000円
500万円を超え1,000万円以下:17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下:23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下:29,000円
5,000万円を超え1億円以下:43,000円
1億円を超え3億円以下:4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億を超え10億円以下:9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合:24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

登録免許税

家族信託にあたって、不動産の登記変更を行う際に、登録免許税を法務局に納めます。
登録免許税の金額は、以下の通りです。

土地:固定資産税評価額×0.3%
家屋:固定資産税評価額×0.4%


また、不動産の登記を司法書士に依頼する場合、報酬は1件あたり10~20万円程度です。

その他実費

家族信託を組む際には、手続きに使う証明書の交付費用など、その他の実費も依頼者負担となります。

・印鑑証明書:1通 300円程度
・戸籍謄本・住民票:1通 300~750円程度
・登記事項証明書:1通 600円程度
・公正証書:1枚 250円
・交通費

など

家族信託を依頼する司法書士の選び方

司法書士は、同じ資格を持っているといっても人によって得意分野が異なります。
家族信託を依頼するなら、家族信託に特化した司法書士を選ぶべきです。
家族信託が得意な司法書士を見分ける方法は、以下の通りです。

・家族信託専門・相続専門のホームページがある
・ホームページに取扱件数が書かれている
・遺産整理や成年後見など、相続に関する様々な情報を掲載している
・サポートが手厚い

など

また、司法書士の専門分野ではない紛争・税務・不動産売買などの領域をカバーするため、外部の弁護士・税理士・不動産会社等とコネクションを持っている事務所もあります。
手続き代行以外の相談をしたい場合には、そういった司法書士を選ぶといいでしょう。

まとめ

家族信託は、基本的に司法書士に相談することをおすすめいたします。
法律や税金について特別な対策が必要ない限り、ほとんどの手続きに司法書士が対応できます。
家族信託を検討している方は、まずは司法書士事務所にご連絡ください。