コラム

財産管理の方法とは?それぞれのメリット・デメリットを比較

年齢を重ねるにつれて、今まで得た自分の財産を、今後どのように管理すればいいのかわからず不安に感じている方は多いと思います。
また、高齢の親や親戚がいる人は、財産管理をしっかり行わなければ将来のトラブルの原因となってしまいかねません。

家族が安心して未来を迎えることができるようになるためにも、財産管理の方法についてしっかりと見直しておきましょう。
そこで今回は、財産管理の様々な方法についてご紹介していきます。

財産管理の方法①成年後見(法定後見)制度

財産管理の方法として、まず成年後見(法定後見)制度が挙げられます。

成年後見とは

成年後見制度とは、加齢による認知症などで判断能力が著しく低くなった人が、財産の管理や日常の事務を代理してもらうために定められた制度です。

この成年後見(法定後見)制度は、本人の判断能力の程度に合わせて「後見人」「保佐人」「補助人」の3種類から選べるようになっています。

後見補佐補助
対象となる人判断能力が著しく欠けており、常にその状態が続いている人判断能力が著しく不十分である人判断能力が不十分な人
申し立てをすることができる人本人・配偶者・4親内の親族・検察官など本人・配偶者・4親内の親族・検察官など本人・配偶者・4親内の親族・検察官など
取り消しをすることができる行為日常生活に関する行為以外の行為借金・訴訟行為・相続の承認・放棄・新築・改築など申し立てを受けた範囲内の中で家庭裁判所が定める特定の法律行為
成年後見人ができる代理行為の範囲財産に関する全ての法律行為申し立てを受けた範囲内の中で家庭裁判所が定める特定の法律行為申し立てを受けた範囲内の中で家庭裁判所が定める特定の法律行為

このように、成年後見制度は判断能力が低下してきた人の財産などを保護し、日常生活を送ることができるように定められた制度です。
上記の他にも、代理してもらう範囲を任意で決めることができる「任意後見制度」も存在します。

成年後見のメリット・デメリット

成年後見にはメリットとデメリットのどちらも存在しているので、事前にしっかりと2つを知っておくことが重要です。

まずは、メリットからご紹介いたします。
・判断能力が低下している状態で結んだ不利な契約を取り消すことができる
・財産管理を他の人にしてもらえるので、不当な財産の処分などを防ぐことができる
・介護や日常生活で必要なサービスの利用を代理で行ってもらえる
・相続に関しての権利や、権利の行使を代理で行ってもらうことができる

一方で、成年後見制度のデメリットについては、以下のような点が挙げられます。
・成年後見制度を申し立てる費用と時間がかかる
・親族なら報酬なしでも良いが、第三者を後見人にした場合は報酬が必要
・相続税の対策を行うことができなくなる

このようにメリット・デメリット両方が存在しますが、判断能力が低下してから悪意を持った人に財産の不当な搾取などを防ぐためにも、制度を利用することを検討すべきでしょう。

財産管理の方法②任意後見制度

財産管理の方法として、次に任意後見制度を紹介します。

任意後見とは

任意後見制度とは、契約など重要な決断をする判断能力がなくなってしまう前に、あらかじめ支援をしてくれる人を定めて契約することで、財産の管理や日常事務などの仕事を任せる制度です。

この財産管理や日常事務などの仕事を任せる人を「任意後見人」といいます。
法定後見制度と違うのは、任意後見制度ではどういったことを任せるのかについて「契約」で定める点です。

より自分の意思を反映した財産管理を望む場合には、任意後見制度を利用すべきでしょう。

任意後見のメリット・デメリット

任意後見制度にもメリットとデメリットがあります。

メリット
・判断能力が低下していなくても利用可能
・公正証書を作成することで公的な証明ができる

デメリット
・判断能力が低下していた場合は利用することができない
・本人の死後において財産管理や事務を委任することができない
法定後見制度と違って、任意後見制度は判断能力が低下していた場合には利用することができません。

また、本人が亡くなってしまった場合、任意後見契約とは異なり別途「死後事務委任契約」を締結していないと財産管理や事務を委任することができないので注意が必要です。

財産管理の方法③財産管理委任契約

財産管理の方法としては、他にも「財産管理委任契約」を締結するという手段も考えられます。

財産管理委任契約とは

財産管理委任契約とは、自身の財産の管理や生活する上で必要な事務管理の全てもしくは一部について、代理で行ってくれる人を選び管理してもらう契約です。

この際に、事前に財産管理の具体的な内容を定めて委任することになります。任意代理契約ともいわれており、民法における委任契約の規定に基づいて行われることが特徴です。

財産管理委任契約は、本人と管理を行う人の間の合意によってその内容が定められて、管理の内容も自由に定めることができます。
法定後見制度とは違って、判断能力が低下していない状態でも事前に利用できるのが特徴でしょう。

財産管理委任契約のメリット・デメリット

財産管理委任契約のメリット・デメリットは以下のような点になります。

メリット
・判断能力があった場合でも利用できる
・財産管理を始めるタイミングや内容について自身の意思で自由に決めることができる
・没後の処理を委任することも可能

デメリット
・任意後見契約では公正証書の作成によって公的な証明ができるが、財産管理委任契約の場合それがなく、客観的な信用に欠ける
・任意後見人の場合の任意後見監督人のような第三者によるチェックが困難
・取消権がない

財産管理の方法④家族信託(民事信託)

財産管理方法として最もおすすめなのが、「家族信託(民事信託)」です。

家族信託とは

家族信託は、認知症など判断能力が低下していく老後や介護が必要な時に備えて、自身の財産を家族に託すことで、その管理・処分を任せる方法です。

信託という手段を取ることで、信頼できる家族に財産の管理を任せることが可能となり、本人の意思にかなった財産管理が行われることが期待できます。
財産管理をはじめ、事業継承や後継相続など、様々なケースに柔軟に対応できる方法です。

信託契約を結ぶことで、本人が定めた目的に従う財産管理が行われることなります。財産がどのように管理・使用されているかを判断能力がある元気な状態のうちに見ることができるので、より安心して財産管理を任せることができる方法と言えるでしょう。

家族信託のメリット・デメリット

家族信託のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット
・信託によって、自身の判断能力とは関係なく財産の管理・処分ができる
・自分の意思にかなった財産管理が可能となる
・成年後見制度とは異なり、柔軟な資産運用が可能

家族信託のメリットで特徴的なのは、成年後見制度とは違った柔軟な財産運用が可能な点です。成年後見では財産管理は本人のメリットのためにしか行えませんが、家族信託では家族のために有用な資産運用をすることができます。

デメリット
・信託ではできず、遺言や成年後見でしかできないものもある
・税務申告の手間が多くなる
・節税効果が期待できない
・受託者が誰か揉める可能性がある

家族信託で注意が必要な点は、成年後見や遺言でしかできないこともあるということです。
成年後見制度では、財産管理の他に身上配慮義務という規定が存在します。財産だけではなく、本人の日常生活まで定められているかどうかが大きな違いと言えるでしょう。

財産管理の方法を変更するには

一度決定した財産管理の方法を変更するには、法的な手続きが必要となる場合もあります。
この法的手続きは難しいものも多く、正しく行うためには法律の知識と時間が必要となってしまうのが悩みの種でしょう。

そこでおすすめなのが、司法書士などの専門家を通じて財産管理方法を変更することです。専門家に頼めば、時間がかかることもなく安心して手続きを行うことができるでしょう。

財産管理の方法を変更したいと思っている方は、ぜひ司法書士にご気軽に相談してみてください。

まとめ

今回は、財産管理の方法について詳しく解説してきました。前もって、老後の財産をどのように管理するのかを決めておくことは非常に重要です。
まだ判断能力がしっかりしている元気な間に、財産の管理方法について決めておけば将来家族が揉めたり、悩んだりすることはなくなるでしょう。

また、財産管理は法的な専門知識が要求される難しいものです。
司法書士のような専門家に依頼することで、安心して財産管理をすることができるようになります。

財産管理でお悩みの方は一度司法書士にご気軽に相談ください。