コラム

相続税の計算方法と各種控除について解説

相続税は税率が高いですが、基礎控除をはじめとした様々な控除や軽減制度があります。
制度を正しく活用すれば、かなり大きな節税も可能です。
今回は、相続税に関わる控除の種類や計算方法をご紹介します。
相続発生時、注意が必要なポイントについても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

相続税の計算はまず基礎控除をチェック

相続税には、どんな人にも適用される「基礎控除」があります。
かなり大きな枠があるため、相続税自体が課税されないケースも非常に多いです。
基礎控除の計算方法は、以下の通り。

3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

そのため、遺産額が3,600万以下なら相続税が発生する可能性はないということになります。
ちなみに、相続人の人数ごとの基礎控除額は、以下のようになります。

相続人1人:3,600万円
相続人2人:4,200万円
相続人3人:4,800万円
相続人4人:5,400万円
相続人5人:6,000万円

その他の相続税の控除

相続税には、基礎控除のほかに条件によって適用される控除が複数あります。
その種類と計算方法について、解説していきます。

配偶者控除

相続税における配偶者の特例(控除)では、配偶者の相続分は「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のどちらか高い方が非課税となります。
つまり、実際の相続額が法定相続分以下であれば、亡くなった人の配偶者の相続税は0円ということになります。
また、法定相続分を超えて相続する場合でも、1億6,000万円を超える部分にのみ、相続税が発生します。

未成年者控除

未成年者控除とは、相続人が未成年(20才未満)の場合に適用される控除です。
計算式は、以下のようになっています。

10万円×(20−相続発生時の年齢)

つまり、相続発生時に19歳なら10万円、0歳なら200万円が控除されるということです。
ちなみに税額控除なので、上記で計算した金額がそのまま納税額から差し引かれます。

障害者控除

障害者控除は、相続人が85歳以下の障害者である場合に適用されます。
計算方法は、以下の通り。

10万円×(85−相続発生時の年齢)

ちなみに、相続人が特別障害者の場合は、10万円→20万円になります。
つまり、最大850万円(特別障害者の場合は1,700万円)が税額控除されるということです。
相続税が数百万円にもなるケースは多くないので、障害者本人の税額から引ききれなかった場合には、その障害者の扶養義務者の相続税額から差し引かれます。

その他の控除

その他、相続税に関わる控除には、以下のものがあります。

・相続時精算課税に係る贈与税額控除:生前贈与を受け、相続時精算課税の適用を受けた場合
・小規模宅地等の特例:自宅や事業用地を相続する場合
・相次相続控除:10年以内に2回相続が発生した場合

「相続時精算課税に係る贈与税額控除」は、被相続人の生前に財産の贈与を受けていた場合に関係があります。
贈与を受けた時に贈与税を納めたり、相続発生時にまとめて納税するという取り決めがあった場合に、贈与税と相続税の二重課税を避けるためにある制度です。

「小規模宅地等の特例」は、被相続人が住んでいた自宅・事業を営んでいた土地・賃貸に出していた不動産などを相続した場合、一定の条件を満たせば相続税が50〜80%減額される制度。
最後の「相次相続控除」は、夫が亡くなって10年以内に妻が亡くなった場合など、相次いで相続が発生した場合を配慮して、相続税が軽減される制度です。

非課税財産とは?

相続税がかからない「非課税財産」には、以下のものがあります。

・皇位とともに皇嗣が受けた物
・墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
・公益事業用財産
・心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
・相続人が受け取った保険金・死亡退職金の一部

上記に当てはまり、一般の人に関係があるのは以下のようなものです。

・保険金や死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の人数」の金額
・墓地・墓石・神棚・位牌・仏具など
・被相続人が学校や寺社を経営していた場合、校舎・寺社仏閣など
・心身障害者の保護者が、遺される障害者のために加入・掛け金を負担していた年金

相続税の控除で注意が必要なケース

それでは、相続税の控除において、注意が必要な場合についてお伝えいたします。

相続放棄をした人がいる

ここまで解説してきた、基礎控除や保険金や死亡退職金の非課税枠には、「相続人の人数」が関係します。
まず、この「相続人の人数」とは「法定相続人の人数」のことです。
実際に財産を相続するかどうかは関係なく、法律上、相続する権利がある人の人数に基づいて計算します。

そして、基礎控除の金額は、相続放棄した人がいても変わりません。
実際に相続する人が何人でも、「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」で計算します。
一方、保険金・死亡退職金の非課税枠には、相続放棄した法定相続人は含めません。
そのため計算方法は、「500万円×(法定相続人の人数−相続放棄した人の人数)」となります。

法定相続人の中に養子がいる

法定相続人に養子がいる場合は、法定相続人に含められる人数に限りがあります。
基礎控除の計算に含める養子の人数は、以下の通り定められています。
・被相続人に実子がいる:1人まで
・被相続人に実子がいない:2人まで

つまり、法定相続人が「実子3人+養子3人」の場合、実際に相続する人数に関わらず、基礎控除の計算上は「4人」として計算します。

法定相続人が既に亡くなっている

法定相続人が相続時に亡くなっている場合、その子供が代わりに相続人となります。これを「代襲相続」といいます。
親子間の遺産相続であれば、子がいなければ孫、孫もいなければ曽孫…という風に下の世代が相続人となります。
兄弟姉妹が相続人の場合、相続人が亡くなっていればその子供(被相続人の甥・姪)が相続人になりますが、この場合の代襲相続は1代まで。甥・姪の子供は、相続人にはなりません。

相続欠格・廃除対象者がいる

続柄上は法定相続人であっても、欠格者や廃除対象者がいる場合には、基礎控除の法定相続人の数にはカウントしません。
相続欠格とは、以下のような行為があった人のことです。
・被相続人また相続の同順位以上にある人を死亡させた、またはさせようとしたために刑に処せられた
・被相続人が殺害されたことを知りながら告発や告訴をしなかった
(子供など告訴のできない人や、殺害者が自己の配偶者や直系血族の場合は除く)
・詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言を作成、撤回、取り消し、または変更することを妨げた
・詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言を作成させたり、撤回、取り消し、変更をさせたりした
・相続に関する被相続人の遺言書を隠匿、偽造、変造、破棄をした

廃除対象者とは、被相続人を虐待・侮辱したことがあったり、著しい非行があり、家庭裁判所によって廃除が認められた人のことをいいます。

遺言書で法定相続人以外が相続する

被相続人が遺言書を作成して、法定相続人以外の人が財産を相続することになる場合もあります。
先にもお伝えしましたが、基礎控除の金額は「法定相続人の数」で計算します。
そのため、実際には財産を相続する場合であっても、続柄上の法定相続人でない人のことは、基礎控除の計算にはカウントしません。

相続税の申告と納税方法

相続税を申告・納付する期限は、相続人が相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
被相続人の住所地を管轄する税務署に、相続人が共同で「相続税の申告書」を提出することで申告し、納税額を確定することができます。

相続税の納付は、原則的に現金一括で行います。
遺産を現金で相続した場合にはその中から支払えばいいですが、不動産や株式などで相続した場合、10ヶ月以内に現金を用意する必要があります。

まとめ

相続税には、基礎控除という控除枠があります。
また、軽減できる制度をうまく利用すれば、相続税を大きく節税することも可能です。
複雑な制度が多く、節税方法も多岐に渡るので、相続税を節約したい方はまずは一度専門家に相談することをおすすめします。