コラム

成年後見監督人とは?職務や報酬、解任について解説

後見契約は、基本的には被後見人と後見人の2者間の契約です。
しかし、場合によってはもう一人、「成年後見監督人」という役割が関わることがあります。
成年後見監督人はその名称通り、後見人の働きを監督する役割を持っています。

今回は、成年後見監督人が必要なケースやその仕事内容、報酬相場などについて詳しく解説していきます。

後見制度とは

まずは、後見制度の概要と、それにおける後見監督人の役割についてお伝えします。

後見制度の概要

後見制度とは、未成年や、認知症や病気で判断力が低下した人などの代わりに、他の人が財産の管理や法律関係の手続きを行う制度です。
十分な判断力がない人が、犯罪の被害にあったり財産を不当に搾取されたりして、損をしないように保護することが目的です。
後見制度には「法定後見人」と「任意後見人」の2種類がありますが、どちらも役割は変わりません。

法定後見人とは、既に判断力が低下している人のために、家庭裁判所が「後見人が必要」と判断した場合につける成年後見人のこと。
任意後見人は、今は十分な判断力を持つ人が、将来判断力が低下した場合に備えて後見人を依頼しておくことで始まるものです。

後見監督人の役割と種類

基本的に、後見制度は被後見人と後見人の2者間のものですが、場合によってはもう一人「後見監督人」がつくことがあります。
後見監督人とは、後見人が適切に役割を果たしているかどうか監督する人です。

後見人は本人の代理として財産の管理などを行う権限を持ち、被後見人は判断力が低下しているため、後見人の不正や怠慢が生じるリスクがあるためです。
そのような事態が起きないよう被後見人を保護するため、後見監督人という役割があります。

後見監督人は家庭裁判所によって選任されます。
後見人が行う事務の内容をチェックして、定期的に家庭裁判所に報告することが主な仕事です。
未成年後見人、成年後見人、保佐人、補助人を監督する人を、それぞれ未成年後見監督人、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人といいます。
ここから詳しく解説していくのは、このうち成年後見監督人についてです。

成年後見監督人の職務

それでは、成年後見監督人はどのような職務を行うのか、具体的に解説していきます。

成年後見監督人が付くケースとは

任意後見制度の場合、基本的に必ず成年後見監督人が付きます。
法定後見の場合で成年後見監督人が付くのは、本人やその家族から請求があった場合と、家庭裁判所が必要と認めたケースです。
後見制度全体に占める割合は、約15%と言われています。

成年後見監督人が付くことが多いのは、以下のようなケースです。

・ 後見人が管理する財産や収入の金額が大きい場合
・ 親族間に揉め事がある場合
・ 後見人の年齢や体調などが理由で、後見人が頼りないと判断された場合
・ 後見人と被後見人の利害が一致しない状況(利益相反)にある場合
・ 財産状況が不確かな場合

要は、後見人が不正や、被後見人の不利益になることをする可能性がある場合に、それを抑止できる人が成年後見監督人になるということです。

成年後見監督人の仕事と報酬

成年後見監督人の仕事には、主に以下の5点があります。

・後見人が行う後見事務の監督
・財産の調査・財産目録の作成への立ち合い
・家庭裁判所への報告
・後見人と被後見人との利益が相反する行為について、被後見人を代表する
・後見人の解任

まず、主な仕事は成年後見人が行う後見事務の監督です。
被後見人の財産を把握し、後見人が私的に流用していないか、不審な使い方をしていないかなどをチェックします。
その結果を家庭裁判所に定期的に報告するのも、成年後見監督人の仕事です。

また、被後見人と後見人の間に利益の対立があってトラブルになった場合、成年後見監督人は被後見人の味方になって意見の主張や法的な手続きを行います。
さらに、後見人が不正を行っているなど解任事由を見つけた場合、後見人の解任も成年後見監督人が判断します。

成年後見監督人は被後見人が亡くなった後の遺産分割協議にも参加し、不動産の登記変更などにも成年後見監督人の同意が必要です。

成年後見監督人の報酬は、管理財産の額に応じて変わります。5,000万円以下の場合は月1〜2万円、5,000万円以上の場合は月2万5,000円〜3万円程度が目安です。
ただし、親族などが成年後見監督人を務める場合には無報酬ということもあります。

成年後見監督人になれる人・なれない人

成年後見監督人には、弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士などの専門家が選任されることが多いですが、特別な資格が必須だというわけではありません。

しかし、以下に当てはまる人は、成年後見監督人になれないと定められています。

・後見人本人
・後見人に近い親族(配偶者、直系血族、兄弟姉妹)
・本人に対して訴訟をした・された人
・破産者で復権していない人

成年後見監督人の就任・解任・辞任

最後に、成年後見監督人の就任・解任・辞任の流れや手続き方法についてお伝えします。

成年後見監督人の就任・辞任の流れ

成年後見監督人を付けたい場合、被後見人やその親族が家庭裁判所に申し立てを行います。
そして、家庭裁判所が成年後見監督人に成人を選任し、就任させます。
先にも触れましたが、成年後見監督人には法律や相続、財産管理などの専門家が選ばれることが多くなっています。
ちなみに、被後見人や後見人、親族が希望していない場合でも、家庭裁判所が必要と判断した場合には就任を断ることはできません。

成年後見監督人が辞任するのは、病気や老齢などの正当な理由がある場合です。
辞任をする際には、家庭裁判所に対して辞任許可の申立てを行う必要があります。
ちなみに、後見人の監督を一定時期行った上で、「後見人が不正を行う可能性がない」という理由で辞任することもありえます。
成年後見監督人がいる場合、登記事項として登録されているため、辞任した場合には変更登記が必要になります。

成年後見監督人を解任することは可能?

成年後見監督人が不正行為を行っていたり、著しい不行跡など後見の任務に適しない事由があると判断したりした場合、被後見人等や親族は後見監督人の解任を請求することができます。
この場合も、選任時と同じように家庭裁判所に申し立てを行います。

まとめ

成年後見制度は、認知症などで判断力が低下した時に、周りの親族や専門家によって財産を管理してもらう方法です。

ただし、成年後見制度では今ある財産を守ることはできますが、積極的に財産を増やしたり、管理方法を詳しく指定することができません。
それが可能なのが、比較的新しい相続対策である家族信託。
判断力が落ちた後も、より柔軟に財産の管理をしたい場合には、元気なうちに家族信託を組んでおくのがおすすめです。