コラム

家族信託の費用はどれぐらい?費用を安く抑えるには?

「家族信託のメリットが大きいことは分かったけれど、手続きのための費用はどれぐらいかかるの?」

このように、家族信託の費用面を気にされていらっしゃる方は多いかと思います。

家族信託は近年注目されている比較的新しい相続対策ですので、手続きを依頼できる専門家の数も他の手続きに比べればまだまだ少なく、そのため金額も専門家によりまちまちです。

しかしながら、おおよその相場感は出来つつありますので、今回は気になる家族信託の手続きの費用についてお伝えできればと思います。

家族信託を行う費用の相場はどれぐらい?

例えば、認知症になった後に成年後見人に司法書士や弁護士が選任されると月額2万円~6万円程度のランニングコストが必要になりますし、その間に不動産の売買や賃貸の契約などをする必要があると更に高額の費用がかかってきます。
65歳 ~ 69歳で認知症と診断された場合の平均の生存期間は10年と言われています。
仮に成年後見人の月額報酬が3万円だと仮定すると10年で360万円以上の金額を支払う事となりますので、トータルコストで考えると家族信託の方が安く済んだというケースも多々見受けられます。
また、成年後見制度は「本人の保護」を目的として、家庭裁判所の監督のもと、厳格に財産管理が実施されますので、財産を運用したり、有効活用することが目的ではないため、ご家族や相続人にメリットがある相続対策が全く行えなくなります。
初期費用だけで判断するのではなく、ランニングコストや利用効果を十分考慮したうえで、家族信託の利用を検討してみてはいかがでしょうか?

各費用項目の内訳はいくら?

下記が家族信託に必要な費用の一覧表です。

【家族信託の手続きに必要な費用一覧】
費用の種類 概要 目安
契約書作成費用 司法書士や弁護士などの専門家に自分にあった信託内容を設計してもらうコンサルティング費用です。 30万円~100万円
契約書作成費用 家族信託の内容が決まった場合、その内容を契約書にするために必要となる専門家への報酬です。 10万円~15万円
公正証書作成費用 公証人役場で信託契約書を公正証書にしてもらう費用です。 2万円~10万円
【信託財産に不動産が含まれる場合】
司法書士への登記依頼費用 名義変更の手続きを司法書士に依頼する際に必要な手数料です。 約10万円
登録免許税 名義変更の手続きをする際に法務局に支払う税金です。 不動産評価額の0.3%~0.4%

次に各費用についてご説明させて頂きます。

①専門家のコンサルティング料

司法書士や弁護士などの専門家に信託内容を設計してもらうコンサルティング費用です。
家族信託は自分で設計する事もできますが、専門家の関与なしに有効な内容の家族信託を設計することは非常に困難で難しく思われます。
コンサルティング費用は各専門家によって決められているため一律ではありませんが、多くの場合信託財産が1億円以下の部分は1%それ以上の部分は0.5%が大体の相場になっている事が多く見受けられます。

相場 信託財産が1億円以下の部分は1%それ以上の部分は0.5%

② 契約書作成料とは

契約書作成料とは、家族信託の内容が決まった場合、その内容を契約書にするために必要となる専門家への報酬です。
この費用には公正証書作成のための公証人との事前打ち合わせや公証人役場への同行費用も含まれています。

相場 10万円から15万円

③公正証書作成費用とは

公証人役場において、公証人に作成してもらう書面を公正証書といいます。
契約後のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。家族信託契約書は公正証書で作成する事を強くお勧めします。
公正証書を作成する際には、契約書に記載された財産価格に応じて手数料が必要となります。(※下記の表参照)

公証人手数料一覧表

④司法書士の登記手数料

信託財産に不動産がある場合、委託者から受託者への名義変更手続きを行う必要があります。
不動産登記にかかる費用はこの司法書士手数料の他、後述する登録免許税の2つがあります。

相場 不動産の評価額や個数によって異なるが、約10万円

⑤登録免許税

信託による名義変更手続きの際に納付しなければならない税金がこの登録免許税です。
登録免許税は固定資産税評価額を基準に以下のとおり算定することになります。
土地の場合・・・固定資産税評価額の3/1000
建物の場合・・・固定資産税評価額の4/1000

例えば 土地の評価額が2,000万円、建物の評価額が1,000万円の不動産を信託する場合、土地の登録免許税が8万円、建物の登録免許税が3万円の合計11万円が登録免許税としてかかってきます。

家族信託の手続きの後にかかる費用はあるの?

必ずしも必要となるものはありませんが、状況によっては必要になる費用をここでご説明します。

・信託契約書を変更費用する場合

信託契約書の内容は一度作成した後に、変更することも可能です。
その際は、既存の契約書を変更するという手続きを取ります。
信託契約書の変更には、およそ10万円程度の費用がかかります。

・信託監督人を置く場合

信託監督人とは
管理運営を委託された財産から得られる利益を受け取る受益者が、未成年者であったり、高齢により判断能力が低下した場合に、信託事務がきちんと行われているかどうかを受益者が判断することは困難です。このとき、受益者に代わって受託者を監督する者を「信託監督人」といいます。
信託監督人を司法書士に依頼した場合、毎月数万円の費用が必要になります。

失敗しないための専門家の選び方

家族信託はたくさんの場面に対応できる自由度が高く柔軟な制度です。
だからこそ、他の相続対策(遺言・任意後見・成年後見・生前贈与等)と比較しながら、
本当に家族信託を設定することが最適な選択肢であるかどうかを検討
する必要があります。
もしかしたら、状況によっては、後見制度や他の相続対策で十分対応できる場合もあるかもしれません。
また、必要であれば、家族信託と成年後見制度等を併用するなど、他の相続対策を併用した方がより最適な結果を得る事ができる場合もあります。
従って、どういった専門家を選べばベストかというと、「家族信託」だけではなく「相続全般」に精通している専門家を選ぶことが一番大切であると言えます。

まとめ

今回、家族信託の費用の相場のお話をさせて頂きましたが、家族信託の手続きには「30万円から100万円ほどの高額な初期費用がかかってきます。
しかし、家族信託を利用する事で得られるメリットと何もしない事によって将来的に発生するデメリットやランニングコストを考えれば決して高い費用ではありません。
初期費用だけで判断せず、あなたの相続対策に一番適した相続対策は何なのかを十分に考慮した上で家族信託の利用を検討されてはいかがでしょうか?