画期的な相続対策である家族信託にもデメリットはあるの?
画期的な相続対策である家族信託にも、デメリットはあるのでしょうか。
一見万能に見える家族信託とはいえ、他の手続きと同じくあくまでも相続対策の手段の一つであり、もちろんデメリットはあります。
今回はあえて家族信託のデメリット面に焦点を当て、リスク面をきちんと知って頂くことで、より家族信託への理解を深めて頂ければと思います。
節税対策としての直接的なメリットはほとんど生じない
家族信託は、柔軟な相続対策を可能とするものですが、相続税・贈与税は通常通りに課税されますので、直接的に節税対策になるかというとその様なことはありません。
但し、
- 1、相続税対策を計画して、長期に渡って実行していく過程で、認知症になったり病気や怪我が原因で相続税対策が中断してしまう事を回避する事ができる。
- 2、相続開始後に相続人間で揉めることによって税務上の特例が使えなくなってしまう事を回避する事できる。
- 3、収益不動産を信託した場合、家族に普通に贈与する場合に比べて譲渡取得税や不動産取得税、登録免許税を大幅に抑える事ができる。
など、長期的な節税対策や間接的な節税対策につながることがあります。
遺言書でできて家族信託でできないことや、遺言書と併用した方がベターな場合がある
例えば、全財産を長女に相続させたいと思った場合、家族信託に全ての財産を入れることは難しいので、遺言書と併用した方がベターな場合や遺留分減殺請求の順番の指定は遺言書ではすることができますが、家族信託ではできない等、遺言書でしかできない事や遺言書と併用する方がベターな場合があります。
家族信託ではできなくて、成年後見制度でしかできない事がある。
家族信託は財産管理はできますが、身上看護はできません。
例えば施設に入所する際の契約を代わりに行うというような事は身上監護にあたりますので原則、家族信託ではすることができません。
ただし、通常は家族であれば入院や入所の手続きはできる事がほとんどですので、
対応できないという事はあまりないと言えます。
不動産を信託財産にした場合、その信託不動産は損益通算の対象にならない
年間収支が赤字の収益物件を信託財産に入れた場合、信託財産以外の所得と損益通算をして課税所得を減らす事ができません。更に、その損失を翌年への繰越をする事もできません。
つまり、信託財産に関する損失は、信託財産以外からの利益と損益通算して課税対象の所得を減らすことができないという事になります。
家族信託に精通した専門家がまだまだ少ない
家族信託は様々な場面に対応できる自由度が高く柔軟な制度です。
但し、新しい制度であるがゆえに司法書士・弁護士・税理士等の専門職であれば誰でもできるという訳ではありません。
また、新しい制度であるがゆえにリスクも確かに存在します。
当然のことですが、専門職でも難しいと言われる家族信託を、書籍やインターネットの情報だけでご自身で実行しようとするのは、自分で自分を手術するようなもので、絶対に避けるべきであると言えます。
他の相続対策(遺言・任意後見・成年後見・生前贈与等)と比較しながら、
本当に家族信託を設定することが最適な選択肢であるかどうかを検討する必要があります。
もしかしたら、状況によっては、後見制度や他の相続対策で十分対応できる場合もあるかも知れませんし、他の制度との併用が必要な場合もあります。
だからこそ、家族信託についてきちんとした見識と実務経験がある専門家に相談することが一番大切であると言えます。
まとめ
今回は、あえて家族信託のデメリット面のお話をさせて頂きました。今注目されている家族信託だからこそ、デメリット面やできないこともきちんと把握した上で検討して頂ければと思います。
ご自身に最適な相続対策を行うために、まずは専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか。