コラム

二次相続だと相続税が上がるのはなぜ?今からやるべき10の節税対策とは

夫婦どちらかが亡くなったとき、配偶者が法定相続人となるのが一次相続といいますが、その配偶者も亡くなったときに発生するのが「二次相続」です。
二次相続は一次相続よりも相続税が高くなることが多く、相続税対策をする場合には二次相続まで考慮に入れる必要があります。

今回は、二次相続の税金が高くなる理由や、その対策方法、使える制度などについてご紹介していきます。

二次相続とは

二次相続とは、最初の相続(一次相続)の後に起こる2度目の相続のことです。
もっとも多い例は、一家の父や母が亡くなって配偶者と子供が相続したあと、その配偶者が亡くなって再度子供が財産を相続する、というものです。

一次相続と二次相続では、相続税の額が大きく違うことがあり、相続対策をするときには二次相続まで見据えた準備が必要となります。

二次相続で相続税が上がる理由

それでは、なぜ二次相続で相続税が上がるのかを詳しく解説していきます。

①法定相続人数が減るので基礎控除額が減る

相続が発生した時には、相続税がかからない「基礎控除」という枠があります。
この基礎控除の金額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で求めます。

つまり、二次相続の場合には、亡くなったその人の分の基礎控除が減るということです。
仮に全く同じ額の遺産を相続する場合、二次相続では基礎控除額が600万円分の相続税が多くかかります減額されます。

②配偶者の税額軽減が使えない

相続税には「配偶者控除」があります。その内容は「『1億6,000万円』または『配偶者の法定相続分』のどちらか高い方が非課税となる」というものです。

一次相続のあと、配偶者が亡くなった場合の二次相続では、この配偶者控除の枠はありません。
一次相続にて配偶者が相続した財産の価額が大きいほど、二次相続で課税対象となる遺産の総額も高くなるのです。

③「相続税の特例」への影響

相続税には、上記で解説した基礎控除・配偶者の税額軽減の他に、以下の特例があります。

・未成年者控除:未成年者が法定相続人となる場合
・障害者控除:障害者が法定相続人となる場合
・贈与税額控除:相続発生から3年以内に贈与財産を受け取った場合
・相次相続控除:10年以内に2回相続が発生した場合


この中で、二次相続で税額が増える可能性が高いのが「未成年者控除」です。
この控除では、「(20歳-相続開始時点の年齢)×10万円」が控除されます。
一次相続の時に未成年だった法定相続人が成人した場合はこの制度が使えなくなり、年齢が上がることで控除額が少なくなります。

また、一次相続の時に障害者だった法定相続人が二次相続までに回復した場合、「障害者控除」は使えなくなります。

「贈与税額控除」は、二次相続の被相続人が、亡くなる前3年以内に法定相続人に財産を贈与していた場合に関係あります。
相続税から支払い済みの贈与税が差し引かれますが、税率自体は相続税より贈与税の方が高いので、結果から見ると贈与しない方が得だったということになります。

最後に「相次相続控除」は、一次相続より10年以内に二次相続が発生した場合に関係があります。
後の項目で解説しますが、この制度を利用すれば、二次相続の相続税をある程度軽減することが可能です。

④「小規模宅地等の特例」への影響

相続税の「小規模宅地等の特例」では、被相続人の配偶者が自宅などを相続した場合、課税額の最大8割が控除されます。
二次相続で、その子供が自宅や土地を相続する場合には、小規模宅地等の特例の要件である居住要件や所有要件を満たせず、特例が適用されないことがあります。

一次相続時は子供も居住しているが、二次相続の発生時には家を出ている可能性がある場合などは、一次相続時点で子供が相続しておいた方が得になると言えるでしょう。

⑤死亡保険金・死亡退職金の非課税限度枠への影響

相続人が受け取る死亡保険金や死亡退職金は、「500万円×法定相続人の数」が非課税になります。
しかし、一次相続時の被相続人が死亡した際に支払われた保険金を、配偶者が保有したまま亡くなった場合には、同じお金が保険金ではなく相続財産という扱いになります。

そのため、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えず、二次相続の相続税が多くなる場合があるのです。

二次相続で増える税額を調べるには

二次相続で増える税額は、大まかにですがシミュレーションサイトなどで計算することができます。
こちらのサイトでは、一次相続・二次相続の税額をまとめて計算可能です。

ただし、ネット上でできるのはあくまでも概算なので、詳しく知りたい場合には相続の専門家に相談しましょう。

二次相続対策は家族信託がおすすめ

二次相続の税額を減らすには、遺言や生前贈与よりも自由度の高い「家族信託」がおすすめです。
家族信託なら、被相続人が亡くなる前から財産を管理する家族を決めたり、自分が亡くなった後、数世代先までの相続人を指定することができます。

また、事業を行っている場合の事業継承や、認知症で判断力が落ちたときの対策にも役立つ、便利な制度です。

家族信託について詳しくは、「家族信託とは?7つのメリットを解説」をご覧ください。

その他の二次相続対策

最後に、家族信託以外で二次相続の税金対策をする方法をお伝えします。

相似次相続控除を活用する

相似次相続控除とは、10年以内に2回以上の相続が発生した時に適用されるもので、まさに二次相続のための制度と言えます。

少し複雑ですが、控除額の計算式は以下の通りです。

相次相続控除額=A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10

A : 今回の被相続人が前回の相続で課された相続税額
B : 今回の被相続人が前回の相続で取得した財産純資産額(取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務及び葬式費用の金額)
C : 今回の相続人全員財産が取得する純資産額の合計額
D : 今回の相続控除を受ける相続人が今回の相続で取得する財産純資産額
E :前回の相続から今回の相続までの期間(1年未満は切り捨て)
※B-AよりもCの方が大きい場合、Cの値はB-Aとなります。

一次相続で財産の取得金額を調整

次に、一次相続の時に、配偶者が取得する金額を調整するという方法もあります。
結果的に二次相続で子供が相続する財産は、一次相続のうちに子供に渡しておこうという考え方です。

これにより、二重に相続税がかかることがなく、一次・二次を合わせた相続税を減額できます

配偶者の資産は増やさない

一次相続の時に、資産を生む財産(家賃収入がある不動産・値上がりする株など)を配偶者が相続すると、二次相続の発生時に財産の総額が増え、税額が高くなります。

一次相続の際に相続する財産の種類を考慮し、配偶者の資産を増やさないようにすることが二次相続対策になります。

生命保険を活用する

先にご紹介した死亡保険金の非課税限度額は、親から子への相続でも適用されます。
そのため、受取人を子供にして生命保険に加入し、親の預金を減らしておくことで、二次相続対策ができます。

また、死亡保険金は、相続税を納税するための資金としても活用できます。

生前贈与・暦年贈与を活用する

一次相続の段階から、財産を計画的に生前贈与していくという方法もあります。
年間110万円までなら、贈与税も非課税です。

また、親が子供の家の購入について資金援助する場合は最大2,500万円が非課税となりますし、家や不動産の贈与は夫婦間でも2,000万円の非課税枠があります。
非課税の範囲内でも、資産を現金化・不動産化することでかなり二次相続対策ができます。

一時次相続で住宅は子供に相続させる

小規模宅地等の特例によって、330㎡までの宅地・住居を、以下のいずれかの条件を満たす法定相続人が相続した場合、80%の相続税控除が受けられます。

・被相続人の配偶者
・被相続人と同居していた親族(別途要件あり)
・被相続人に配偶者も同居する法定相続人もいない場合、相続開始までの3年間借家住まいの法定相続人


家や土地は高額なので、非課税枠の大きい配偶者が相続することが多いです。
しかし、子供が上記の条件を満たせる場合には、子供が相続した方が二次相続対策になります。

二世帯住宅や賃貸併用住宅にする

2014年以降は、建物内部での往来ができない二世帯住宅でも、小規模宅地等の特例の対象になっています。
また、減税額は50%になってしまいますが、賃貸併用住宅にも小規模宅地等の特例が適用され、その場合には同居などの条件がありません。
子供との同居が難しい場合には、敷地内同居や賃貸への建て替えを検討するのも一つの方法です。

相続する財産の種類を変える

一次相続の時点で、現金化できる資産は可能な限り現金化しておくと、二次相続で高額納税を求められたときの対策になります。

また、現預金が多すぎる場合、不動産や株式といった価格が変動する資産を購入するなどで二次相続までに財産の評価総額が少なくなれば、相続税を減額できます。

相続人の間で遺産分割の合意を取る

二次相続に限らず、遺産分割には法定相続人の合意が不可欠です。
よく考えて相続税対策をしても、法定相続人が内容に納得していなければ遺産分割がやり直しになってしまうことがあります。

遺産の分割を考える際は、法定相続人の遺留分を侵害せず、全員の合意が取れる内容に設定しましょう。

まとめ

相続税対策を考えるときには、配偶者が亡くなったときの二次相続についてもよく考える必要があります。
相続の内容によって納税額が大きく変わりますので、判断力のあるうちに対策しておきましょう。

法律や税金の専門知識が必要になる分野でもありますので、二次相続対策に興味がある方は専門家への相談もご検討ください。